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血液が足りないようで、唇まで真っ青だ。
「さぁ、ウサギ小屋が見えるかな?」
あたしはニヤついた笑みを浮かべてサチにそう聞いた。
サチは俯いたまま顔を上げようとしない。
「スズの時は窓からの転落死だったよね。友達とふざけ合ってて落ちたってことになってた。サチのときはどうかなぁ?」
そう言いながら、あたしは無理矢理サチの顔を上げさせた。
その瞬間、サチの表情が強張った。
なにかに怯えるような目。
震える体。
あたしにすがりついてくるサチの手を、振りほどいた。
サチはグッと唇を引き結び、涙で滲んだ目をこちらへ向けている。
「行ってらっしゃいサチ」
あたしはサチの耳元でそう囁いたのだった。
☆☆☆
サチの体が目の前から消えてしばらくした時、消防車と救急車の音が聞こえて来た。
学校のすぐ近くで「火事だ! 建物の中に女の子がいる!」という大人たちの声が聞こえて来る。
「今度は火事かぁ」
あたしはそう呟き、火事の現場を確認することもなく、歩き出したのだった。
☆☆☆
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