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なんとかその場は言い繕っておいた。
まあ、親指の働きに応じる給料が分かる人間など、この世にはいないだろうとは考えつつも、後ろ髪を引かれる思いにはなった。しかし、追究しようにも追究のしようがないので、束の間で振り切ってしまった。
今まで立て込んでいて、自分の親指をまじまじと見ていない。
よく観察してみると、親指の根元は、なぜかケロイド状になっており、目を逸らしたくなる。ただ、不思議と痛みはない。
親指親指と言っているが、両方の手の親指である。
2本セットなのか、1本ずつ独立しているのだろうか。
まあいい。
その親指になにがあったのだろう。
なにか、私が気に障ることをしたのだろうか。でも、私の手から逃げ出すようなことなのだから、なにかの思惑がありそうだ。
そのように思いながら、親指の書き残した置き手紙に、失踪の思いを馳せるが、やはり見当がつかない。
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