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仕事に関しては、事務という職種なので、キーボードを打つのが主目的となる。ただ、親指のことで電話の取次ぎは免除させてもらっていた。
キーボードでの入力には3本の指だけで、いつも入力していたので、それほど阻害されなかった。ただ、スペースキーを押せないので、結果入力スピードは遅くなるのが弊害として残ってしまった。
まあ気にするほどのことでもなかったのだが、データ入力ではなぜだかミスタイプが増えてしまった。
―親指の不在によるタイピングの不手際―
―親指の不在による心の動揺―
やはり、早く親指には帰ってきてほしい。
親指が私の指としてくっ付いていたときは、なにひとつしゃべらず、非常におとなしかった。また、私に酷く従順であった。
その後、2週間ほど過ぎたあたりであったろうか、LINEで親指から連絡がきた。
『今月末には帰宅します』との文言で、私は安堵感と共に強い疲労感を覚えたのだった。
LINEでの親指のアイコンは、もちろん親指自身だった。
そのアイコンを注視すると、親指の頭の先がアルファベットのYのように枝分かれしていた。
やはり2本セットらしい。
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