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「僕はね、狭いところでチヤホヤされるのが好きなんだよね」
誰にも明かしたことのない本音を、寝物語にナツコにだけは語ったこともあった。
「ナツコちゃんだって、そうでしょ?」
やる気のない素振りを見せていても、所詮はモデル上がりの駆け出しタレントだ。自分たちは似た者同士で、彼女からも同意の返事が返ってくるものに違いない。そう思い、さり気なく問いかけた。
聞こえないふりを通したけれど。
海千山千を自負するシンヤの想定を覆す答えを、ナツコはよこしたのだ。
「ほっといてくれますか」
*
ほどなくして、スポンサーであるYAMATOモータースの社長に囲われたと聞いて、シンヤのナツコへに対する興味は徐々に失われていった。彼女もまた、普通の女だったのだと。
ナツコと縁が切れた時期。偶然、シンヤにも転機が訪れた。『深夜のシンヤ』の最終回を円満に終え、タイトルに自身の名前の入った報道系の冠番組を持てることになったのだ。しかも、平日ゴールデンの帯時間で。
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