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スタイリストの用意したブランドスーツを身にまとい、飄々と原稿を読む。その姿は、居酒屋でイッキを煽っていた下世話な男と同一人物と思えない変貌ぶりだと……よくも悪くも、多方面から評価が集まった。
バラエティ色の強かった大橋シンヤは、インテリ・キャスターへの転身を図る計画に見事に成功したのだ。
……ただし、放送されるのは一部地域限定、なのだけれど。
『深夜のエッチなお兄さん』から『夕方のダンディな紳士」へ。
「ローカルのスター、ここに極まれり……だな」
もちろん、シンヤは幸せだった。
*
自身がキャスターを務める番組進行の途中で、偶然にもナツコの姿を見かけた。デパ地下の買い物事情を生放送中、リポーターが一般客へインタビューを遂行する背後に、彼女は存在した。エプロン姿で総菜を売る美しい横顔が、画面の端に映り込んだのだ。
夢中で接客をしている彼女には番組クルーなど当然目に入っていなかったし、視聴者からも、ナツコの姿が放送されたことを指摘する声は特に上がらなかった。
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