【番外編②】秋永の幸せ

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 会うたびに、落ち着かない気持ちにさせられる。 ーーアンバランスな女。  秋永がナツコに初めて抱いた印象は、日増しに強くなる。 「モデル、やらない?」 「え、私、ですか?」 「そう、私」  素顔に近い薄化粧に、濃紺のリクルートスーツ。地味な装いでも思わず声をかけてしまったのは、手足の長さや頭身数が完璧だったせいだ。理想的なスタイルを生まれもっているにも拘わらず、己に自身がなく控えめで、常にオドオドと周りを慮って暮らしている女。  それが、森野ナツコだ。  最後まで本人には明かさなかったけれど、秋永が道行く素人をスカウトしたのは、ナツコが初めてだった。 『モデル、やらない?』 ーー素人以下の声かけじゃないか。  こんな胡散臭いスカウトを自分が受けたなら、秒で逃げたに違いない。それでも、ナツコは律儀に答えてくれた。 「就活中なんです。全然、内定が貰えなくて……」  しめた、と思った。まだ、誰の手垢もついてないなら、話は早い。 「困ってるんだ。君、スタイルいいし……助けてくれない?』」  そして、秋永の思惑通り。ナツコは落ちた。
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