【番外編②】秋永の幸せ

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 言葉は冷たくとも、自分を慕う雛鳥を見る親鳥の気持ちで、秋永はナツコを育てようと決めていた。  転機が訪れるまでは。 *  スポンサー社長である矢的の好みは把握していた。スレンダーで、どこか憂いを秘めた黒髪の女。 ーー森野ナツコ、そのものじゃないか。  多少際どいコスチュームを身につけさせたとしても、レースクィーンという称号ありきなら、品もある。そこからCM出演や、本人のやる気次第で女優業へシフトチェンジすることも可能かもしれない。  大きな仕事へ繋げるチャンスだと、秋永は一人気持ちを高ぶらせていた。いつもなら、こんな失敗は回避できたはずなのに、ことナツコに関しては、自分を見失っていたのかもしれない。 「ボイコットした!?」  オーディションを逃げ帰ったと聞いたときには「終わった……」と思った。けれど、天は秋永を見放さなかった。矢的の会社であるYAMATOモータースの一社提供である『深夜のシンヤ』にレギュラー出演するアシスタント嬢に欠員が出た、との情報が入ってきたのだ。
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