【番外編②】秋永の幸せ

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「大橋シンヤを連れこんでるんの?」  嫉妬などではなく、気づいた事実を反射的に確認しただけだった。矢的をパトロンにつけるくらい(したた)かになれたのだ、それくらいのことで驚きはしない。それなのに、取り乱したナツコから「何で」と詰め寄られた秋永は、呪術にはまってしまったかのように応えてしまった。 「好みだったからに決まってるだろ」  どう振る舞えば相手がか喜ぶのかは分かっている。乱暴に、よりサディスティックに。押さえきれない衝動をぶつけるように抱いたなら、ナツコは満足したに違いない。けれど……。 「帰るよ」  唇を奪うだけに(とど)めて去ろうとした時のナツコを、秋永は忘れることができない。怯えたような、この世の終わりのような、苦悶の表情。外見はサラブレッドの競走馬のように美しくとも、本体は弱々しい小動物だったのだと……改めて正体を晒した瞬間だった。 ーー何と、罪なことをしてしまったのだろう。  そして贖罪(しょくざい)の間もなく、制裁が自分へと返ってきた。 「これ、秋永君のだよね」  矢的に呼び出され、失くしたと思っていたエンゲージリングを差し出された。 「どこで……」
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