【番外編③】ハルカの幸せ

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 折しも、ローカルメディアを席巻していた【大橋シンヤ】が、新しく深夜番組をスタートさせるという噂が耳に入ってきた。『共に盛り上げるためのアシスタントを募集している』という情報も、公式発表前に得ることができた。 『私を番組で使ってください』  大胆にも、大橋シンヤの所属する事務所宛に懇願の手紙を書いた。目的もなく通っていた大学を辞めてまで、ハルカは【大橋シンヤ】というカリスマ(ローカル限定)に着いていこうと決めたのだ。  お金をかけ、退路を断ち、歯を食いしばってハルカが手に入れてきたものを……。 ━━何の労力も差し出さず。あの女は、かっさらっていく。 『いい年をして、純粋なんですね。ナツコさん』  そんな嫌味のひとつも言いたくなるのは、当然なのだ。自身にそう言い聞かせ、ハルカは突き進む……はずだった。  シンヤが女を道具のように扱っていたのと同様に、ハルカとて【大橋シンヤ】を生き抜くための手段として見ていたのだ。 『恋愛とか、愛憎とか、そういうんじゃないの。ビジネスよ』  ナツコに告げたセリフは紛れもなく本心だった、はず……だけれど。 ━━自分に夢中だったはずの男が離れていくことは、とてつもない屈辱であり……寂しい。 『座んなさいよ、私のポジションに』  ナツコに告げた最後の捨てセリフ。  あれは、ローカルという主戦場を奪われたハルカの、完全なる敗北宣言だった。
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