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職業柄、容姿の美しい女に何人も出会ってきたはずのシンヤでも、どこか儚い彼女の雰囲気に惹かれた。あわよくば、幾人もいる取り巻き女の一人として据え置きたい……という欲望も、当然沸いた。
モデルやタレントの卵である女たちは、名声欲と自己顕示欲の塊だといっても過言ではない、とシンヤは常々思っていた。
少しでも最短距離で目的へたどり着くために、彼女たちはシンヤのように名のある業界人に接触することを試みる。中には、露骨に枕営業を仕掛けてくる猛者もいた。この世界では、よくあることだ。
シンヤは慎重にその女たちの資質を査定し、相手にするか否かを定める。その眼力には、我ながら自信があった。
森野ナツコ……よく分からない女だった。
胸を張って闊歩できる容姿を持ち合わせながら、いつもどこか所在なげで、暗い表情ばかりを浮かべている。
仕事を取るためならと、ガツガツ前へ前へと出てくる女たちばかり見てきたシンヤにとって、ナツコは新鮮で珍妙な女といえた。
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