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『あっ、いえ。これは2人だけの秘密なんで話せません』
2人だけの秘密。それは訊きたいところではあるけど訊くわけにはいかないんだろう。乙女二人の秘密なんだから。その間に入れるのは妹と母親だけだ。その妹も今や病人生活。
『とにかく今は元気ですから。心配するようなことはありませんよ』
「ありがとう」
咄嗟に出てしまった。なんでお礼なんて口から出てしまったんだ。自分から押し付けておいて、それは麗句にも溜息にもならない。あまりにも笑えない言訳だ。
『何を言ってるんですか。困った時はお互い様じゃないですか。もうっ』
「うん。そうだよね。それとまだ千咲ちゃんには言ってなかったんだけど………」
『はい?なんですか?』
言ってもいいだろうか。彼女の病気のことを。いや、この人なら多分、分かってくれるだろう。むしろ僕はもう護れない。護る権利すらないんだ。だけどあの子は誰かに護られていないといけない存在。
「あの子は………」
彼女に何があったのか、どうしてそうなったのか。その経緯を僕の主観だけで説明した。途中、泣いていたように聞こえたのは空耳だろう。説明を終えて言槻姉が押し黙って意を決したように口を開いた。
『分かりました!わたしがその病気を治してあげます!』
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