第十一話 運命通り  <詩紡詞彫 編>

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スマホを片付けようとした時に着信音が鳴った。 液晶画面を見ると言槻千咲(ことづきちさき)。ここで取ってしまったらスピーカーが壊れるくらいの物凄い強硬の声で怒鳴ってくるかもしれない。はたまた何らかの脅喝でもされるんじゃないか。この人は『更正』されてしまったから。恐る恐る通話ボタンを押す。 「何でもしますから。どうか命だけは。命だけは」 『えっ?いきなり何を言ってるんです?』 「だってあの子を強引に押し付けてしまったから」 『あぁ、そのことですか…。いえいえ、怒ってなんかいませんよ。そんな畏まらないでくださいよ。別にわたしはそのことについてこうして電話したわけじゃないんですから』 後半になりつつ声の音程が上がっていた。よかった。心底、安心した。 本当にカツアゲでもされたりしたら否応なく従うことになりそうだった。あの時の変な声を思い出す。この人を『お嬢様』なんて呼びたくない。ただのお友達だ。そう、今のところは。[第四話 空言騙し <榊原美緒梨 編> 参照]
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