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目の前に差し出されたのは給水ボトル。
手を伸ばそうとするとすぐに引込められる。
「ってあげるわけないでしょ。なに?そんなにわたしと間接キスしたかった?ふふっ、唇くらいならいくらだってあげるわよ。間接じゃなく直接ね」
魅惑の眼。
それは冗談なのか、本気なのか。
紛れも無く前者。
「そういう冗談は…はぁー…止めてくださいよ…ふぅーー」
「本当だらし無いわねぇ」
小半月さんは呆れた様子でベンチに座った。
僕も隣りに座る。
見上げた空は儚く透き通って見えた。
一匹のカラスが旋回している。
静かだ。静か過ぎる。
さっきまでの熱さが放れていくようだ。
少し落ち着いたから話を戻そうと隣りを見る。
ボトルを傾けながら同じ空を見上げる女性の姿がそこにあった。
それは風景とマッチし色っぽさも感じさせる。
こんな人が恋人だったらさぞかし幸せだろう。
まぁこの人には心に決めた人が居るのだから今更だ。
「で、なんだっけ?」
思い出したように口からボトルを離す。
染みた唇がどこかほんのりと濡れている。
「あの、ですね―――」
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