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かい摘まんで説明する。SCAPEGOATのことは伏せておいたけど。ただ旅行と勘違いしてくれればいい。
小半月さんは僕の説明を頷きながらときたま呆れながら聞いてくれた。結局、言訳で納得してくれたみたいだ。後は留守番の了承を得るだけ。
「それでわたしに留守番を」
「はい」
「そうね…。その旅行から帰ってくるのはいつなの?」
「せいぜい6泊7日ぐらいかと」
「一週間ね」
一週間もあれば事足りるだろう。行ったところで何をするでもなく雨女のことについて詳しく聞ければいいんだから。
「どうでしょうか?」
「う~ん…まぁわたしも暇っちゃ暇だけどさ。それにさっくんもでしょ?」
むしろそっちをお願いしに来た。『さっくん』というのはうちの家で飼っている犬。名前なんて付けてないのにこの人は、なぜか『さっくん』と呼んでいる。名無し以外のことはどうとでもなる。あの子はもう居ないんだから。
「とりあえずさっくんの面倒を見ればいいのよね?鍵はきみが持ってるわけだし。あっ、そうなると居候してる人が困るか」
「それは問題ないです。自宅に帰らせますから」
「じゃなくて、もう一人居るじゃない?あの髪が朱くて長い人。なんて言った?鯛焼き殺し?」
「『溜息殺し』です」
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