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「昔馴染みだからってくらいで、こんなに三芳のこと気にかけるわけねーじゃん。でも、それが迷惑だったならごめん。もう、やめるな」
淋しげに笑った川名が、私の手を離す。まるで失恋でもしたみたいな川名の表情に、私の胸が鈍く痛んだ。
どうして、川名がそんな泣きそうな顔するの……? さっき傘を差し出されていたあの子は、川名の好きな人なんじゃないの?
私から離れて廊下を歩いていく川名の背中を見つめる。
もし、あの子が川名のカノジョじゃないなら……。いや、もし万が一カノジョだったとしても、ここまで追いかけて来てくれた彼の手をこのまま離してしまうのは嫌だ。
そう思ったら、歩き去って行く川名の背中に向かって、勝手に足が動き出していた。
「待って!」
叫んで呼び止めると、川名が驚いたように振り返る。
「ごめんなさい。川名のこと、迷惑なんて思ってない」
追いついた川名の制服の袖をつかむと、彼が私を見下ろして大きく目を見開いた。
「ほんとはずっと、嬉しかった。困ってるときにいつも、川名が助けてくれたこと。ありがとう」
不器用に笑いかけると、川名が首に手をあてて視線を下げる。
「どーいたしまして。ていうか、まさか三芳がそんな必死に追いかけて来てくれと思わなくて、ちょっとびっくりなんだけど……」
「追いかけるよ。だって私、クラス離れたらもう関係なくなるなんて言っちゃった」
川名の袖をつかむ手に、ぎゅっと力を入れる。
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