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「ちょっと汚れてたから、洗ってたの。濡れたままじゃカバンに入れられないから保健室でビニール袋もらおうと思って。具合悪いとかじゃないから、気にしないで」
「家で洗濯できないような汚れ方だったってこと?」
含みを持たせた川名の聞き方に、うまく答えられずに視線を逸らす。
「昼間のこともあるし、なんか心配なんだけど」
「川名に心配されるようなことなんて何もないよ。私は平気だし」
苦笑いで川名を交わそうとしたら、やけに深刻なそうな目をした彼に手をつかまれた。
「いや、全然平気って顔じゃないだろ。そんな泣きそうな顔して、俺のこと誤魔化せると思ってる?」
川名につかまれた手が。真剣な眼差しをぶつけられている顔が熱い。川名が心配してくれているのがわかって嬉しい。
嬉しいけど……。さっき川名に傘を出していた隣のクラスの女子の顔がチラついて、彼の優しさを素直に喜べなかった。
「もう、いいよ。こういうの……」
「何が?」
「川名は昔馴染みへの同情で私のこと庇ったり助けてくれたりするのかもだけど、そういうのは要らないから」
「三芳、何言ってんの?」
「もうすぐクラス替えだし、あとちょっと我慢すればいいことなんだよ。佐藤さんたちと離れたら、こういうのもなくなるだろうし。川名とだって、次はクラスが離れるかもじゃん。そうしたら、私とはもう関係なくなるんだし……」
「それさ、遠回しに俺のしたことが全部迷惑だったって言ってる?」
「え?」
川名がふっと息を漏らすのが聞こえて、顔をあげる。
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