明後日の、その先も。

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 平凡な私が言うのも失礼な話だけど、川名はいい意味でも悪い意味でも平凡な男子だ。クラスでの立ち位置も、顔立ちもふつう。  そんな彼と私は小学校のときからの同級生で、昔はよく近所の公園で一緒に遊ぶ仲だった。学年が上がるにつれて自然と一緒に遊ばなくなったけど、同じ高校に進学した川名は今でもたまに私に話しかけてくる。  そうは言っても、ただのクラスメートでしかない川名が、この状況で私に声をかけてきてくれるとは思わなかった。 「ここ片付けといてやるから、先に手ぇ洗って来いよ」  川名がそう言って、床に散らばったご飯やおかずを雑巾で拭き取っていく。茫然とその様子を見ていると、不意に顔をあげた川名がにこりと笑った。 「どーした? あ、ついでにこれで制服の汚れも拭いてきな」  川名がそう言って、汚れていない綺麗な布巾を手渡してくれる。 「あ、りがとう……」 「ほら、早く行ってきな」  布巾を手にしたまま立ち上がれずにいると、川名が手で追い払うような仕草をする。  彼に促されるままに立ち上がった私は、よろよろと歩いて学食から一番近いトイレに行った。  お味噌汁をかぶった手を洗って、汚れた制服のスカートを濡らした布巾で拭く。汚れは取れても制服についたおかず臭はどうしても消えない。  臭いを気にしながら戻ると、定食を溢した床はほぼ綺麗に片付けられていた。
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