明後日の、その先も。

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「どうした、川名。傘ないの?」 「あー、うん。ビミョーな降り方だよな。走っても帰れそう」 「濡れるじゃん。私、駅までいれてあげようか?」 「おー、助かる」  笑いながらカバンから折り畳み傘を取り出しているのは、たぶん隣のクラスの子だ。名前は知らないけど、顔は見たことがある。  彼女がパッと広げた傘に隠れて川名の顔は見えない。だけど「助かる」と言った彼の声がどこか弾んでいるように思えた。    もしかして、カノジョかな。それとも、川名の好きな人、とか……。  川名の顔を見て穏やかになったはずの心が、どろどろとした暗い気持ちで濁っていく。  何を勘違いしてたんだろう。私と川名はただのクラスメートなのに。彼が私に優しくしてくれるのも、「目を惹く」なんて思うのも、小学生のときの昔馴染みだからに決まってるのに。  隣のクラスの女子の折り畳み傘に入って帰ろうとする川名に背を向ける。  何も始まってすらいないのに、失恋したみたいな気分になるなんて。変なの……。  苦笑いを浮かべながら、私は保健室に向かって全力で走った。
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