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真の番へ*
「お願い、僕を、抱いて」
「ダメだ」
「あなたが好きなんです」
グラングの顔が獣化する。もう自分でも、自身をコントロールできなくなってきているらしい。けれどそれでもよかった。訳がわからなくなってロンロを抱けば、グラングはきっと助かる。
「グラング、僕は、構わないから」
両手を伸ばして、ふさふさした頬を掴み、大きな口に口づけた。するとグラングは激しく身を震わせて、ロンロにのしかかった。床に押し倒すと、歯で服を引き裂く。
「グオオオオォォッ」
聞いたこともない激しい咆哮をあげて、全身の筋肉を硬直させ、自分の服も破いていく。司教や部屋にいた家臣らは怖ろしさに後ずさりした。
「……これは、もう、あの犬は助からん」
「ロンロっ……」
ララレルが泣きながら、家臣のひとりに連れていかれるのが視界の端に見える。皆も怖れて逃げていく。部屋はグラングとロンロのふたりきりになった。濃密なフェロモンが周囲に満ちている。息もできないくらいの苛烈な香りだ。けれど、ロンロはそれにウットリと魅せられたようになった。
アルファの香り。
オメガが求める、至高の薫香。本能をつなぐ架け橋。世界が互いの存在だけになって、他の何もかもがはじけ飛ぶ、甘い檻。
「グラング」
欲望の獣になったグラングはヒトの心をどこかにおき忘れてしまったかのようだ。狂ったような情欲だけに捕らわれている。けど、ロンロは怖くなかった。ただ、可哀想で愛おしいと思った。
「運命の番じゃなくても、僕はきっと、あなたに出会ったときに好きになっていた」
狼が喉奥で唸る。
「だって、すごく素敵で、優しくて、立派な王様だったから」
大きな力強い手がロンロの内ももを乱暴に掴んでひらく。しかし抵抗しなかった。
「沢山、可愛いっていってくれてありがとう。すごく嬉しかった。美味しいものや、ふかふかのベッドをありがとう。僕、生まれてきて、一番幸せな時間を、ここですごせました」
グラングは聞こえているのかいないのか、唸り声しか発しない。ロンロの白い肌にギリリと爪を立て、自分のほうに引きよせる。グラングの股間には、天をついていきり立つ剛直があった。
アルファの性器は太く長く、そして硬い。これで一晩に何度も突かれると、いつもおかしくなったみたいに感じてしまう。
ロンロの後孔も、快楽を予感してじわりと濡れた。
「だから、あなたを助けることができて、嬉しい」
瞬間、焼きごてのような、巨大で獰猛な塊がねじこまれた。経験したことのない凄まじい熱さが下肢を襲う。粘膜が摩擦で灼き切れそうになった。
「あ、あ、ああッ――」
グラングが一気に奥まで突き入れる。体内の柔らかな道が、グラングの分身で形を強制的に変えられる。臓腑を打擲されて、脳髄まで快感が駆け抜ける。
ロンロは意識が遠のいた。
気持ちいい――死ぬほど。快楽が強すぎて、全身の神経がビリビリする。
「あ、あ、あ」
声が出なくて、か細い喘ぎだけがもれた。
グラングも快感を覚えたのだろう、背を丸め、低く呻く。
「……ロンロ」
挿入しただけで、グラングは果てた。太い性器が震え、飛沫がへその下あたりで弾けるのがわかる。けれど、こんなもので終わるはずはない。グラングはさらに深く己の長剣を差しこんだ。アルファのペニスの根元には大きな瘤がある。それが無理矢理ねじこまれる。
「あ、や、あ、ああっ」
グリグリと薄い粘膜を抉りながら、瘤はロンロの中に収められてしまった。こうなったらもう、グラングが正気に戻るまで抜いてもらえない。
「ロンロ……ッ」
グラングが悲痛な叫びをあげた。
「こんなこと、したくはない」
白金狼の目に涙がにじむ。
「したくはないのに、とめられん」
グラングは泣きながら腰を進めてきた。ズッ、ズッと深い音が後孔からもれて、ロンロの小さな尻がその度に大きく揺すられる。フェロモンのせいだろう、痛みは全くなく、ただ泥沼に沈められるような苦しいばかりの愉悦があるだけだった。
「だいじょ、ぶ、んぁ……い、いい、から……ぁ、ぁ」
ロンロの小さなペニスも、勃ちあがりユラユラと揺れている。抽挿が激しくなる。抜き差ししているわけではないので、グラングのペニスは、ロンロの中で前後しているだけだ。瘤がひっかかった門は、うがたれるたびに大きく引きつれた。
身体が壊れそうだった。グラングの攻めはいつもより酷烈で、終わりは全く見えなかった。こんな行為に、身体が何日も持つはずがない。
ロンロは段々身体から力が抜けていき、ついには両手をだらりと床に投げ出した。下肢をつらぬく楔の存在だけが、自分を支配していく。けれど、恐怖はなかった。快楽神経がそれを麻痺させていた。
「グラング、グラ……ン、グ……」
うわごとのように相手の名を呼ぶ。もう何も考えられない。
「好き、好き、だから、だい、じょ、ぶ」
泣かないで、グラング。お願いだから。
グラングは力一杯ロンロを抱きしめてきた。
「私の番、私の命」
愛情あふれる言葉に、心が満たされていく。意識が薄くなっていく中で、ロンロは自分の内側から、何か新たなものが生まれてくるのを感じていた。
今までにないほどの、歓喜の蜜があふれてくる。グラングを受け入れている場所が熱に蕩けていくようだ。
「……あ、す、すご、ぃ……。ぃ、ィ、く……っ」
アルファの精液が、オメガの本能を開花させ、身も心も本物の番へと覚醒させていく。
ロンロはそれにのみこまれるように逐情していた。
「は……ぁ、ぁぁ……あっ」
四肢を戦慄かせ、愛する人に与えられた絶頂に身を任せる。
そして白濁を吐き出しながら、ロンロは恍惚の闇へと落ちていった。
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