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冬馬はボスに呼ばれ、友人であり、仕事仲間の神崎 実と共に、ボスがいる部屋に向かう。
「ボスからの呼び出しとは、また新たな任務だろうか。」
冬馬が何気に呟く。
「どうせ、また密輸の件についてッスよ。」
頭の後ろで手を組み、気楽に話す実。
部屋の前に着くと、冬馬が3回ノックをする。
「有明です。」
しばらく経ったあと、
「入れ。」
中から声が聞こえた。
ゆっくりとドアを開ける。
部屋の中には、巻きタバコをふかすいかつい男が椅子に座ってとある冊子を吟味していた。
お察しの通り、天神商会のボスだ。
横には、黒縁メガネをかけた七三分けのすらっとした男が分厚いファイルを持ってたっていた。
秘書だ。
巻きタバコを置き、大きく息を吐き、ボスが話し始める。
「有明、神崎。お前たちに、1つお願いしたいことがあってな。」
「なんでしょうか。」
そう言うと、ボスは自分が持っていた冊子を冬馬に渡す。
渡された冊子を冬馬と実が見る。
「そこに載ってる奴を探して連れて来い。」
「…こいつは。」
冬馬が書いてあった名前を見て、呟く。
「条件が良いと判断した所に着く殺し屋、みなはリーラと読んでいる。」
「あっ、こいつオレ知ってる。殺し屋だけど、わざと急所を外して、拷問するのが趣味だって噂がたってるもんな。」
「おかしな話だ。殺し屋がわざと急所を外すなど。だが、わざと外すのも至難の業だがな。」
何枚かめくったところに、顔写真が載っていた。
肩まである薄い桃色の髪にサングラスをかけ、大型の銃が入っているであろう大きなバックをからっていた。
「しかし、今どこにいるのかは…」
「今は近くに依頼で来ているらしい。こちらから条件を提示して、リーラを取り入れる。」
「でも、なんの依頼かは…」
「3日だ。3日以内にリーラをここに連れて来い。」
「しかし…」
「話は以上だ。もう出て行っていいぞ。」
「…」
横を見ると、秘書がドアを開けて待っていた。
冬馬と実はボスに軽く頭を下げ、部屋を出る。
階段をおりながら、実は不満を言う。
「ボスも滅茶苦茶だな。3日以内にリーラを連れて来いだなんて。」
「だが、手がかりが無いわけじゃない。」
そう言いながら渡された資料をめくる。
「目撃情報や提示された条件、よく見られる系統の場所も細かく書いてある。」
「これも秘書さんが作ったんだよね。」
感心しながら見ていると、
「ねぇ、何見てるの?」
不意に下から声をかけられた。
「あー!姐さん!今日は早かったんっすね!」
「その呼び方やめなさいって言ってるでしょ。」
ボスの愛人である麻亜里は、腕を組み実を睨んでいた。
「そんな怖い顔しないでよー。」
「あんたが変な呼び方するからでしょ。で?なにか新しい任務?」
「ボスから人探しを頼まれた。」
「人探し?そんなの、どこぞの何でも屋にでも頼めばいいのに。」
「そういうわけにはいかない。よりによってリーラだからな。」
「リーラ?誰よそれ。」
麻亜里は冬馬に近づき、冊子を覗き込んだ。
載っていた写真を見て、納得した。
「あーこの人ね。何回か聞いたことはあるわ。」
「姐さんでも知ってるってことは結構有名なんだね。」
「でもって何よ!でもって!」
「痛い!痛いよ姐さん!」
麻亜里が実の頬をつねる。冬馬はしれっと下の階におり、外に出る。
「あっ、待ってよ冬馬!姐さんまたね!」
「待ちなさいよ!実!!」
麻亜里を避けるように、実は急いで階段をおり、冬馬を追いかける。
人探しが始まる。
天神商会本部ビルの向かい。
丁度ボスの部屋が見える屋上から、
冷たい街の風を浴びながら一点を見つめる1人。
「…見つけた。」
そう呟き、頬笑みを浮かべる。
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