10. Night Part

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 綴が机の上の煙草を手に取る。それを奏司の目の前に出すと、小さく手首を振った。フィルターの部分まで煙草が飛び出る。 「お前が今俺と居てストレス感じてるんなら吸っていいよ」 「………っ」  綴の言葉に、頭を殴られた感じがして、奏司が虚だった目を見開いた。真っ直ぐに見つめてくる綴の目にダメな自分が映っている。 「…ずるいよ、藤音さん」  奏司が俯く。  誰よりもずっと一緒に居たい人が目の前に居る。  母との電話の呪いは消えた。  客観視すれば、自分の今の状況は幸せ以外の何物でもない。  奏司は顔を上げると飛び出した煙草を人差し指で押し込んだ。  後ろでポットの再沸騰を知らせるベルが鳴った。綴は奏司の頭をくしゃっと撫でると、座って待ってろと合図した。  やばい、幸せ過ぎる。  奏司は撫でられた髪に手を当て綴を振り向く。 「で、藤音さんはいくつの時から吸ってるんですか?」  明るい声で奏司が聞く。 「俺はじゅ…、って言うかバカ」  綴がカップ麺にお湯を注ぎながら少し笑って奏司を睨んだ。  奏司は今になってやっと、藤音綴の部屋に居るのだという実感で死にそうになっていた。 ********
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