20.

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「お前も『今の自分の音』を聴かせろ」 「え?」 「あれはお前の音じゃなかっただろ?」  綴があれと称した音がどの音なのかは分かりきっている。 「ちゃんと、お前のテストをする」 「え?!」  驚いて、奏司がプレーヤーを落としそうになる。 「いや、それはダメですよ。あれ一回って約束で受けてもらったのに」 「真面目かお前は」  綴が奏司の飲みかけの野菜ジュースを取って一口飲む。 「自分の音も出さないで終わるなんて、俺だったら嫌だけどな」 「…それは」  奏司も何か思う所があるのか、肯定の意味を残したまま黙る。何より、今聴かされた綴の音が、奏司の中の奏でたい衝動を揺さぶった。  この音で歌う藤音綴を見たい。 「じゃああれだ、予選通過だな」 「予選?」 「ピアノのコンクールも予選と本選があるんだろ?」 「…はい」
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