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ステージ袖から人が出てくる。客席から「おー!」と掛け声が飛ぶ。ファンと言うよりは仲間のようで、声を掛けられた男性は軽く手を上げて返すとドラム席に座った。続くように二人男性が出てくる。
「藤音さん!」
奏司が思わず出した声に、前にいた数人の客が振り向いたが、ステージには届かなかった。
オレンジ色のTシャツにジーンズにスニーカーというラフな格好でギターを肩に掛けた藤音綴がステージに立つ。
「…あれ?」
しかし藤音綴はセンターマイクまで行かず、ステージ上手のギターアンプの前でポジションを取った。軽く音を出し、フットスイッチを確認すると、ドラムと目配せをする。
「どういうこ…」
奏司が豊に聞こうとしたその時、前奏なし、いきなりボーカルの曲が突如始まる。マイクを握っているのは金髪で小柄の、全然知らない男だった。
「え?」
何これ?
何これ?
何これ?
かなりの疑問符を頭上に浮かべている友人を横目に、豊は掻き消されるのを承知で奏司に告げる。
「現実だよ」
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