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 天国の門を叩いたら実は地獄だった。  そんな顔をしている友人にペットボトルを差し出しながら、豊はちょっと落ち着いた?と聞いた。 「いや、まだ分かんないんだけど」  奏司が混乱した頭を抱えてうつむく。 「うーん…まあそうだわな」  とりあえず店を出て、入り口の前にある歩道の縁石に座り、奏司は今起こった『事件』ともいうべき光景を整理しようとしていた。 「…かっこよかった、藤音さん」 「そうな」 「ギターめっちゃ上手かった」 「だな。この前のライヴん時も弾きながら歌ってたけどな」 「今日は歌ってなかった」 「そうな。今回は歌ってなかったな」 「ボーカル、めっちゃヘタクソだった」 「お前死んでもそれ他の人の前で言うなよ」  変な所に着地した会話に、豊が恐ろしいわと言わんばかりに奏司をたしなめた。
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