10. Night Part

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 奏司がスマホの電源を落とす。いらない連絡が無いようにとの意味を込めて。 「マジか、明日だったか。帰って練習とかの予定だったか」 「家に帰ってたら寝ずに練習だったかもですね」  奏司が息を付いた。言わないけど疲れているのだろう。 「ねえ藤音さん」 「ん?」  奏司が赤いネクタイを緩めた。シャツのボタンを一つ外す。何だかいつもの奏司と雰囲気が違う気がして、綴はその疲れた顔に何とも言えない辛さを感じる。きっと家に戻ったらいつもこんな表情なのだろう。 「煙草、吸ってみたいです」 「………」  奏司がさっき綴が机に置いた煙草を見た。 「煙草ってストレス解消になるんでしょ?」  だから大人は吸ってるんでしょ? 「未成年とか、そんな面倒臭いこと、藤音さんも言うの?」  口元だけで奏司が笑う。明らかにいつもと違う奏司を、綴が無言で見つめる。いや、自分が知っている奏司なんてほんの少しで、ほんの数日で、どれが本当の佑木奏司かなんて自分にも分からない。 「藤音さん、ダメ?」
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