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綴が奏司にスポーツ系ブランドの上下スウェットを借す。四センチの身長差はあるが、服的には守備範囲、ぴったりだった。綴は薄めの長袖Tシャツにスウェットパンツ姿で、お家モードになっている。身長からすると痩せ気味の綴にはTシャツもスエットも少し大きくて、だぶついて見える。奏司は綴の手元をじっと見つめた。ラーメンを食べる手が動く。
「今日練習したかったか?」
「え?」
綴がラーメンの汁をすすりながら上目遣いに聞く。まさか明日が選考の日とは思わなかった。
「…まあでも」
箸を置いてごちそうさまと手を合わせる。
「今日はもう弾かなくていいよ」
奏司も箸を置く。
「いいんですかね、弾かなくていいって言われたのなんて初めてだ」
「いいよ。ピアノもねえし。お前あの大学で何時間弾いてたんだよ。つか休息も必要必要」
「休息…か」
煙草を取る綴の手をまた奏司が見る。
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