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「決めた!俺…」
奏司が何かを決意して立ち上がった時、GENEの階段を上がってくる人影が見えた。
「藤音さん、皆川さん、お疲れ様です!」
先に反応したのは豊だった。
「おー豊、何バイトサボってんだよ」
階下から上がって来たのは藤音綴と、No-isのメンバーの一人だった。
「サボりじゃないっスよ、今日はライブ終わりに酒が出るから俺は休みっス!」
豊が笑いながら縁石から立ち上がる。
「ああ、打ち上げな。うちボーカルしか出ないわ」
楽しそうに近付いて来たのはドラムを叩いていた男だった。優しそうなお兄さんというタイプの男だ。
「奏司、ドラムの皆川発さんだよ」
奏司がペコリと頭を下げる。でも目線はずっと綴の方に向いている。
「こいつ幼なじみで同じ高校の…」
「おわ!赤ネクタイ!何キミ音楽科?」
パーカーのファスナーを下ろしていた奏司の襟元を見て「すげえな」と発が後ろを振り返る。綴は一瞥しただけで、ポケットから煙草を取り出すと火を点けた。
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