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「いやあ振られたね、奏司くん」
爆笑している発と、
「お前いきなり何言ってんだよ!」
慌てふためく豊が奏司の前へ回り込む。
「え!お前泣いてんの?!」
驚いた豊が声を上げる。奏司の目からは涙が溢れていた。それはもう盛大にぼたぼたと頬を伝ってシャツに落ちている。それを見た発が更に笑う。
「何?テンションのメーター振り切っちゃった?まるでプロポーズみたいだったよ奏司くん」
いやー、いいもん見たわと、発は奏司の肩に手を回し、よしよしと頭を撫でた。
「振られちゃって辛いのかな?」
「違うんです。藤音さん、投げ捨てる声まで素敵で」
え、この子真性の変態なの?と発が豊に真顔で聞く。
「好きなんです、ただ、好きなんです」
胸を抑えて、小さくなった綴の後ろ姿を見送る奏司に、発は笑えない、いや、笑ってはいけないものを感じた。
「…本気の本気?」
トーンの落ちた、真剣な声音で、発が奏司に問いかける。
「俺もうあの人しかいないです」
迷いなく言い切った奏司に何か言おうとした豊を発が制す。
「すごいなあ、こっちまで胸が痛くなってきちゃったよ。恋してるみたいだね、まるで」
発が優しく笑う。
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