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「…恋?」
頭の中で反芻する綴の歌、言葉。
ああ、これは、この渇望は、そうか、
恋に似ている。
奏司はゆっくり頷いた。
「俺、奏司くんに賭けてみようかなあ」
発も同じように、綴の後ろ姿を見ながら呟いた。
「ねえ奏司くん、俺ら錦街中央大学の軽音楽部にいるから」
それだけ告げると「じゃあね」と言って手を振った。発の姿が見えなくなって、やっと豊が口を開く。
「マジか…マジかお前」
驚愕とまではいかないにしろ、やはり驚きを隠せない豊が右手で口元を覆った。
奏司は袖で涙を拭う。そして何も言わずに頷いた。
「でも奏司、バンド組むったって…お前の状況じゃ…」
奏司は心配そうに自分を見つめる豊の方へ向き直った。涙で頬はびしょびしょだが、清々しい笑顔がそこにあるのを見て、豊が奏司の本気度を知る。
「藤音さんに出会わせてくれた豊には一生感謝する」
「奏司…」
「それからごめん。パーカーの袖に鼻水付いた」
「奏司ぃ」
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