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 錦街は時計坂学園から二駅の割と大きめの街だった。学生から会社員まで集まるような街で夜でも人が多い。  駅から真っ直ぐ十分ほど歩くと、錦街中央大学の正門が見えてくる。授業が終わっている夕方の時間でも生徒は多く残っている。部活動やサークル活動も盛んなのか、門を潜ると沢山の勧誘立て看板が置かれていた。常緑樹の並ぶ広い道の向こうには、校舎であろういくつかの建物が並んでいる。  奏司は門近くにある構内案内板を見上げた。案内と共に学部名が書かれている。目に見える建物とその案内図を交互に見ながら位置を確認する。 「藤音さん何学部なんだろう?」  そう呟きながらも、奏司はクラブハウス的なものを探した。しかし案内板には運動部の部室位置を示すものしか載っていない。  奏司はとりあえず奥へと進んだ。並木道の終わりに案内標識が立っている。文学部、経済学部、社会学部、教育学部…矢印型になったプレート標識が各方向に向いているが、流石に『軽音部』という標識はない。
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