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 ずっと水中に潜っていた身体が、久しぶりに地上に浮き出たように、音が鮮明に聴こえた。久しぶりの呼吸。久しぶりの太陽。  佑木奏司(ゆうきそうじ)はじっとステージを見つめていた。微動だにしなかった、いや、動けなかった。琥珀色のスポットライトの下で歌う藤音綴の声に魂ごと持っていかれてしまった。 『運命』という言葉を使うなら今だ。  ああ、俺は出会ってしまった。  奏司ははっきりとそう思った。 ********
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