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『あなたが好きです』
プツリと音がして、再生が終わった。カウントがゼロに戻る。
一瞬、息が止まった。綴はゼロになったデジタル表示を見つめたまま立ち尽くした。
「…ば…か」
絞り出すように声にした時、止まったはずの涙がまた頬を伝った。
綴がメモリースティックを抜く。それを両手の手のひらで包むと、俯く自分の額に押し当てた。
緊張と、愛おしさが混じった、それでも際限なく優しい声。
「…ばか」
もう一度呟いて、綴が顔を上げる。そして弦を張り替えたばかりのギターを手にすると、綴は何かを決意したように一度大きく鳴らした。
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