20.

2/14
前へ
/395ページ
次へ
「…綴?」  目の下にうっすらクマがある。二日しか経っていないのに痩せた印象もあって、発の怒りは収束し、心配が全面に出た。  しかし当の本人は何食わぬ顔で起き上がるとオーディオプレーヤーを停止させ、イヤホンを外してそれに巻き付けた。  いつもはスマホに音楽を入れ、それを聴いている綴がプレーヤーを手にしているのを見て、何か特別な音源だろうかと発が首を傾げる。 「よし」  綴が立ち上がる。 「え、何がよし?」  発が心配そうに声をかけるが、綴は傍に置いてあったギターケースを背負うと入り口に向かう。 「ちょっと行ってくるわ」 「…え?」  発が数回瞬きをする。この光景を一度見たことがある。あの時も確か夏だった。 「うそ、デジャヴ…」  そう呟いた発に綴は後ろ手を上げる。 「マジか…」  見送りながら発が嬉しそうな顔をする。 「マジかあ」  そして涙ぐんだ。 *****
/395ページ

最初のコメントを投稿しよう!

117人が本棚に入れています
本棚に追加