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「…綴?」
目の下にうっすらクマがある。二日しか経っていないのに痩せた印象もあって、発の怒りは収束し、心配が全面に出た。
しかし当の本人は何食わぬ顔で起き上がるとオーディオプレーヤーを停止させ、イヤホンを外してそれに巻き付けた。
いつもはスマホに音楽を入れ、それを聴いている綴がプレーヤーを手にしているのを見て、何か特別な音源だろうかと発が首を傾げる。
「よし」
綴が立ち上がる。
「え、何がよし?」
発が心配そうに声をかけるが、綴は傍に置いてあったギターケースを背負うと入り口に向かう。
「ちょっと行ってくるわ」
「…え?」
発が数回瞬きをする。この光景を一度見たことがある。あの時も確か夏だった。
「うそ、デジャヴ…」
そう呟いた発に綴は後ろ手を上げる。
「マジか…」
見送りながら発が嬉しそうな顔をする。
「マジかあ」
そして涙ぐんだ。
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