20.

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 昼休み。  いつものように奏司は普通科の教室でサンドイッチをかじっていた。 「うーん…」  唸る奏司に豊が「そのサンドイッチ不味いの?」と声をかける。 「いや、昨日レッスンでダメ出しされた所がまだ上手く弾けなくて」 「ああそっか、もうすぐコンクールだよな佑木」  一緒にお昼を食べている佐々木が、机に置かれた奏司のスマホを指差す。音楽プレーヤーが起動されたままになっていて、傍にはブルートゥースのイヤホンも置かれていた。 奏司が昼休みにまでピアノのことを考えているのは珍しい。ましてや、音を聴くということは今までになかったかもしれない。豊も佐々木も、奏司が今度のコンクールで本気を出そうとしているのだと思って、邪魔をしないようにと小声になる。 「じゃあコンクール、彼女が観に来るんだ?」 「いやまだ返事してないんだよ奏司」  豊と佐々木のコソコソ話を聞いて、奏司が「あっ!」と豊に向き直った。 「今日返事しようと思うから、放課後、普通科と音楽科の連絡通路で待っててって伝えてくれる?豊、次の選択科目彼女と一緒だよね」 「お、おう」  豊がとうとう来たかと頷く。佐々木が羨ましいと足をバタバタさせた。何故か「断る」という選択肢を誰も指摘しない。そんなもったいないことを高校三年の健全な男子がするな!と言わんばかりだ。もちろん奏司も断る気はない。
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