20.

4/14

117人が本棚に入れています
本棚に追加
/395ページ
「ごめん、ちょっと音聴く」  サンドイッチを置いて奏司がイヤホンを耳に差し込む。一度息を吐くと目を閉じた。  豊は半袖を着た奏司の腕を見た。変なアザは無さそうだ。そして、何となく奏司の姿を頭から足の先まで見る。身長が伸びた気がする。閉じた目に掛かる、少し伸びた真っ黒の髪が大人っぽい印象を与える。腕もガッチリしたような…。 「特定の子が出来たら、泣く女子続出だな」  豊と同じ印象を持ったのか、佐々木が豊に向かって苦笑いした。その時。 「………?」  豊と佐々木が同時に廊下の方を見る。何やら階段の方がざわついている。廊下に出ているクラスメートたちの視線が一斉に何かを見つめた。 「何事?」  豊と佐々木が立ち上がって廊下に向かおうとした時。 「?!」  豊の顔に驚きの、いや、驚愕の表情が浮かんだ。  開けっ放しになっていた教室の入り口、そこに姿を現したのは、ギターケースを背負った藤音綴だった。 「とっ、とう…」  驚きのあまり言葉にならない豊を、そして何事かと遠巻きに見つめる沢山のギャラリーを全く気にも止めず、綴は教室に入る。
/395ページ

最初のコメントを投稿しよう!

117人が本棚に入れています
本棚に追加