20.

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 奏司の脳の処理機能が追いつかない。そんな奏司にもう一度綴が聞く。 「何聴いてんだ?」 「…エチュード、Op.10-3、通称『別れの曲』…です」  綴の目が上を向き、横を向いて、最後に首を傾げる。 「久石…」 「ショパンです」 「………」 「………」  綴がギターケースを下ろして近くの机に立て掛ける。そして、 「またショパンかよ!お前ショパンの回しモンか!」 「有名な曲です!聴けば藤音さんも知ってます!」 「…ホントだな?」 「…すみません、藤音さんが知ってるかは分かりません」  漫才の掛け合いでも始まったのかと周りが半笑いで見守る。  綴は近くにあった椅子を自分の方に引き寄せると、どかっと座った。 「つか、嫌なタイトルだな」  綴が静かに言う。 「…綺麗な曲なんですよ?」  奏司が笑う。  ああ、藤音綴だ。  夢じゃない、本物の藤音綴が目の前に居る。
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