20.

8/14
117人が本棚に入れています
本棚に追加
/395ページ
 少し前に奏司が聴き倒した曲。 『RIOT IN TOWN』  奏司がもらった音源のように武市の演奏部分が入っていない。だけど、明らかにあの時の音源とは違う。  奏司が音を聴き分けようとイヤホンを押さえた。目を閉じ、じっと集中する。  音が新しい。  リズムギターが少しだけ重い音になっている。多分ギターの種類が違う。演奏の仕方も変わっている。歪みが増えて大人の感じがする。  綴は音に集中する奏司をじっと見ている。 奏司は息をするのも忘れて聴き入っている。三分弱の静寂。曲が終わると奏司が大きく息をした。 「これ…新しい」  呟くように言った奏司に綴が頷く。 「これは『今の』俺の音だ」 「今の…?」  今聴いたものが綴が新しく演奏して録音したものだと知って、奏司の身体がぞわっと震えた。ずっと過去に囚われてきた綴が奏でる新しい音、新しい世界。  そして、いつかきっと歌うはずの音。
/395ページ

最初のコメントを投稿しよう!