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綴が今度はサンドイッチを取って齧る。
「あ、藤音さんそれ…」
奏司が言うより先に、綴が嫌な顔をした。
「キュウリ抜いとけよ」
言いながら綴がキュウリを口から摘んで出し、フィルムの上に置く。
「すみません」
謝る奏司に、そこは理不尽て思わないのかよと、遠い場所から豊が心の中でツッコむ。しかし『いつもの二人』が帰ってきたようで、少しワクワクもしている。
綴が椅子から立つ。
「ギターはこれを貸してやる。ケースのポケットに時間と場所を書いたメモを入れてある」
「………」
奏司がギターケースを見る。前に借りたものとは違う。多分、今綴が使っているものだろう。
「別に強制じゃねえ。嫌なら来なくていい。その時は高倉にでもギターは預けといてくれ」
「…はい」
窓から入って来た風が綴の髪を揺らした。綴が髪を耳にかけた。
やっぱりとても綺麗だ。
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