20.

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 豊が落ち着けと奏司の背中をさする。騒いでいたかと思うと急に黙った奏司が額をゴツンといわせて机に突っ伏した。ホントにこいつ大丈夫かよと佐々木が奏司と豊を交互に見る。 「…同じことしてくれた」 「は?何が」  もはや正気かどうか分からない幼なじみの言動を、それでも豊は拾ってやる。 「武市さんの時と同じことしてくれた」 「…え」  奏司の声が少しだけ震える。 「ヤバイな、嬉しすぎて死にそうだ」  例えあのテストがフェアじゃなかったからと、温情で再テストを持ちかけてくれたのだとしても、十四の綴が欲しいものを手に入れるためにやったことと、同じ行為で誘ってくれたことに胸が熱くなる。 「そうなのか…」  豊も奏司の気持ちが分かって、背中をぽんぽんと優しく叩いた。 「つか流石だな藤音さん、中学の時にもう不法侵入やらかしてたのかよ」  豊が笑う。その言葉に奏司も顔を上げて笑う。  奏司が自分のスマホをポケットに仕舞う。ショパンと藤音綴の勝負は綴が圧勝したようだ。綴の置いて行ったプレーヤーのイヤホンを耳に突っ込む前に、奏司はフィルムの上のキュウリを取って食べた。 「おい佑木、それさっっきの人が一回口に…」  言いかけた佐々木を豊が制す。ふっと笑て「何も言うな」と言わんばかりに首を振った。
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