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「弾いたか?」
綴が奏司の下ろしたギターケースを見る。奏司が頷く。
「午後の授業サボりました」
綴に出会ってから奏司くん不良化してんじゃないの?と発が豊に耳打ちする。豊が苦笑した。
「それでも四時間くらいしか触れなくて」
「音確かめるには十分じゃん」
綴が口元で笑ってギターを出すように合図した。
「前に借りてたギターとは重さが違うんですね」
「ああ、こっちのがちょっと重いな」
「でも俺、音はこっちが好きです。今の藤音さんの声に合ってる」
そう言って微笑む奏司を横目で見て、綴はパイプ椅子を二台、向かい合って並べる。それを見た奏司が「え?」という顔をした。
「別に立って弾かなくていいよ。向かい合って演ろうぜ」
「は、はい」
緊張感と緩さが混じる空気。奏司はとりあえずシールドを繋いだ。
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