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「藤音さん…」  呼ぶ声が震える。  それは、つまり…。 「だから気持ち悪りぃな、それ」 「…は?」  突然の綴の「気持ち悪い」発言に奏司が気の抜けた声を出す。 「何で今更苗字で呼んでんだよ、気持ち悪りぃ」  口をへの字に曲げて見上げてくる綴に奏司が「え、そこ?!」と問い返した。 「いや、だって…大好きな人と距離を置くって相当辛いじゃないですか!もうそんな小さなことから慣らしていくしか自我を保てないじゃないですか!」  奏司も何か吹っ切れたように大きめの声で訴えかけた。 「ただのファンになるための努力を今からしとかないと、なんだかんだ言ってもやっぱり将来の相方さんに嫉妬するかもしれないじゃないですか!」 「相方って…漫才師かよ」 「さよならだって言いますよ!友達?後輩?そんなのに甘んじてこの先も藤音さんと会ってて、どうやってただのファンになれるんですか!自己防衛くらい取らせてくだい!」 「それで彼女かよ」 「えっ…?!」  パイプ椅子に座ったまま足を組んでじっと見上げてくる綴のその一言に、一瞬奏司が怯む。そういえば豊が喋ったと言っていたのを思い出す。
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