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「出来たんだろ?彼女」
「あ」
今日返事をしようと思っていた、そして豊に呼び出しておいてくれと言ったのは覚えている。それから綴が現れてどうしたんだっけ…本気で奏司が考え込む。
「まあそれは自己防衛の一貫じゃねえか。ちゃんと好きになったから付き合うんだろ?」
何となく綴がむくれているような感じがして奏司が瞬きをする。いや、そんな訳がないと自分を叱咤する。だけど…。
「別にお前に女がいようがいまいが俺には関係…」
「あります!」
奏司のあまりの大声に綴が一瞬黙る。
「やばい返事するの、マジで吹っ飛んでた」
「…は?」
「藤音さんに全部頭もってかれてたからでしょ!」
もう告白してきた女子には、申し訳ないを通り越して自分で滑稽だった。
この際全て曝け出してやろうかと思う程。
「俺はそんな誠実な奴じゃないです!」
漫画なら『キリッ』という描き文字が付きそうな表情で奏司が綴を見る。
「彼女でも作って気持ちを紛らわそう程度でした!」
ああそうですよ、利用しようとしましたよ、悪いかこの野郎!という勢いで奏司が告げた。
「な、何堂々と言ってんだよ!つか返事してねえのかよ!」
綴が慌てる。と言うか、なぜ自分はこの『彼女』の件にこんなに引っかかっていたのか。しかし深く考える前に奏司の言葉が飛んでくる。
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