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「藤音さん自分の存在舐めないでください!彼女にもショパンにも圧勝してんですよ!」  予想以上の回答に綴の顔が赤くなる。 「だいたい藤音さんだって!」  奏司がバンと机を叩いて綴の方へ詰め寄る。綴が気押されるように少しだけ体を引く。思えばこんな風に言い合うのは初めてではないだろうかとお互いが思う。 「な、何だよ」 「藤音さんだって俺のこと名前で呼んでくれたことないです!」 「…は?」  え、そんな事?と綴の顔に書いてあるのが分かって、今度は奏司がむっと口を尖らせる。  綴が記憶を辿るように目をキョロキョロさせる。 「…なかったっけ?」 「ないですよ。いつも『赤ネクタイ』か『お前』です」  言い切る奏司に、そう言えばそんな気も…?と、綴がチラリと奏司の顔を見た。奏司もしばらく綴を見つめていたが、詰め寄った体をすっと引いてパイプ椅子に腰掛けた。  冷静になろう、という空気が奏司から流れる。もっと大事な事を伝えなければならなかったはずだ。そして聞かなければならないはずだ。  おもむろに綴が立ち上がる。奏司を見下ろすと一つ息を吐いた。 「佑木くん」 「気持ち悪っ!」
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