21.

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「奏司」  ぴくりと奏司の背中が震える。伏していた顔をゆっくり上げる。 「俺のギタリストになって下さい」  時間が、止まった。  息をするのも忘れて、奏司は綴の顔を見た。  今、  藤音綴は何て言った?  奏司が体をゆっくり起こす。  夢?  違う。  心臓がだんだんと大きく鳴り始める。  食い入るように綴を見つめたまま奏司は立ち上がった。 「返事は、奏司」  向かい合うその目の先で一番欲しい人が自分と同じように自分を見つめている。 「はい…」  声が震えた。愛しさが溢れた。  奏司がそう答えた時、奏司の瞳の中に飛び込んで来たもの。 「………っ」  奏司が絶句する。
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