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「やばい、嬉しい!」
「お、大袈裟だろ!」
そんなに?!というくらいの歓喜の表情の奏司に、このまま勢いで抱きしめられそうな気がして、綴は奏司の頭を軽く叩いた。
「つか早く戻れよ、もう!」
奏司が満面の笑みで「はあい」と答える。
「じゃあソッコー終わらせてきます」
そう言って綴に手を振り、遠巻きにしていた発と豊にも軽く手を上げ、ホールの中へ戻って行った。
「テンション上げるのも下げるのも上手いな、綴」
「下げるの上手いってどういうことですか?」
発の言葉に豊が爆笑する。対照的に綴は大きな溜息を一つ漏らした。
何だか変な緊張をしたのは知られたく無い。
「ソッコー終わらすって、スポーツじゃないんだから無理だろ」
演奏時間決まってんだから、そう言いながら喫煙室に入ろうとする綴に発が、
「ねえ、デートの行き先ってさ…」
発も腕時計を見ながら声を掛けた。綴は何も言わず発を一度だけ見ると、喫煙所に入って、今度こそ煙草に火を点けた。
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