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 厳しい音楽科という面が強くありながらも、高等部からは普通科もあり、音楽科とは違い幅広く生徒を受け入れている。普通科は青いネクタイで、成績によって分けられたりはしない。むしろバイトもバイクもOKという自由な校風を売りにしている。厳しいばかりが目立つ音楽科と自由さをアピールする普通科とでバランスを取っているのかもしれない。言っても私立だ。生徒は多い方が『経営』には良いに決まっている。  奏司は音楽科ピアノ専攻だった。  もちろん中学から時計坂で、ずっとクラシック音楽を勉強し続けていた。音楽漬けの毎日。それは音楽科と、奏司の育った家庭環境では不思議に思うことなど何もない、ただの日常だった。  友達もそれなりにいるが、時期が来ればライバルになる。だから本当の意味で語り合える仲間かと言うとそうではなかった。奏司は小学校が同じだった豊が時計坂の普通科を受験すると聞いた時本当に喜んだ。安心したと言った方がいいかもしれない。豊が合格し、自分が高等部に上がってからは昼休みはほとんど普通科の校舎まで行っていた。音楽科では昼休みも練習に費やす学生が多い。普通科の連中からは、奏司はちょっと変わった赤ネクタイと言われながらも、豊の友達ということもあって受け入れられ、そちらでの仲間も増えていった。 ********
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