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 人にぶつかりそうになりながら改札を抜けると、奏司は全速力で走った。  やばい、遅れてしまう!腕時計を確認すると八時三分前だった。駅からGENEまではそう遠くない。週末の人混みを避けながらとにかく走る。背中に背負ったデイパックに詰め込まれている楽譜が重い。捨ててやろうかと本気で思う。  GENEのネオンサインが見えた。GENEは入り口から地下に下っていくタイプのライブハウスで、地元のバンドに愛される小さな箱だった。 8a88f521-83f7-4d7f-81ff-5615ba0f175d 「ちょい待ちちょい待ち!」  受付に座っていたでかい身体のヒゲのお兄さんに止められる。奏司は「あ」と言って、事前に豊からもらったチケットを取り出した。 「いや、そうじゃなくて」  お兄さんが奏司のブレザーの袖を軽く摘んだ。 「制服はダメっしょ、いくら何でも」  苦笑いするお兄さんに「え、ダメなんですか」と奏司が振り向た。 「わ、赤ネクタイじゃん」  お兄さんがびっくりしたように奏司を見た。
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