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宛名の無い手紙
拝啓
お元気ですか?
私のことを覚えていますか?
とはいっても死んだあなたに問えるはずがありませんね。
では私の方から勝手に色々と話します。
聞いてるだけで構いません。
この前、
近所の道路に魚が一匹落ちていました。
その魚は、
近所の子供たちが釣ってきた魚です。
その子が家に帰る時に落としてしまったんでしょう。
私は、
その魚を川に戻そうと決意する前に
少し観察を試みました。
ピチピチと跳ねる魚は、
必死に呼吸をしようと口を開いていました。
そのあられもない姿を見ると、
つい放ってしまう気持ちも分かります。
しかし、
私はそんな冷たい人間でもないため拾い上げました。
それでも魚は私の手の中でも跳ねていました。
もし、これが人だったと思うと背中がぞっとします。
この魚が人だったら、
荒い呼吸をしながら助けを必死に求めているでしょう。
しかし、周りは誰一人すら魚に手を差し延べません。
所詮、こんなものです。
人間なんて。
分かりますか?
人というのは、助けない生き物なのです。
冷たい生き物なのです。
あなたにはもう分からないでしょうが、
きっと分かる日がいつかきます。
では、またその日まで。
かしこ
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