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しばらくするとタカヤ達が俺の元にやってきた。頭を下げて俺の向かいに腰を下ろし、仁は膝をついてタカヤの酒を作り始める。
「さっきのやつから話聞いたら、やっぱりドラッグがメインでそこから金貸しにまで流れているそうです」
「半グレのやつらの身元は分かったのかよ」
「いや、半グレの事は知らなかったっす」
「ドラッグの出所は? 」
「中東の方から流れてきた新種のドラッグで、その仲介をしているのが、関西の中野会を破門になったやつが手引きしてるらしいっす」
「関西? 」
「はい。ただ、そいつは仲介のみで半グレ達がドラッグをばら撒いて、ドラッグ欲しさに金に困ったやつに金を貸しているみたいっす」
仁がタカヤにグラスに入った酒を出すと「いただきます」と頭を下げてグラスに口を付ける。
「それで? どこが窓口なんだよ」
タバコを咥えると、仁が腰を上げてライターを手に取る。
「お前も飲め」
ライターを仁から取って、グラスを指差すと仁は「すみません。いただきます」と頭を下げて、グラスに氷を入れる。
「捕まえた男は何にも知らされてなくて、女に言われて撒き散らしてたらしいっす」
「女? 」
「はい。あの男も見た目の良さで女釣る為に雇われた感じで、何も知らされず女からの指示で動いてたみたいっす」
「で? その女は? 」
「サキって名前で1度会った以外はメールでしかやり取りしてないらしくて、男の携帯からメールで連絡して今は返信待ちです」
タカヤは男から取り上げた携帯をポケットから出して、俺の方に向けてテーブルの上に置く。携帯を開くも連絡用だけのプリペイド携帯で、何の情報も無かった。
「……サキねぇ。女一人じゃ、そんな売り上げになんねーだろ」
「サキ以外にもクラブとかホストとかでばら撒いてるらしいんですけど、窓口はサキって女らしいです。捕まえたやつも誰が仲間かも知らないみたいっすね」
「身元もわからない半グレか。ちっ。めんどくさそうだな」
所帯を持たない半グレ達はケツ持ちをヤクザに頼んでいる事が多いが、ヤクザに頼むと言う事は金銭が発生するという事。
うじ虫の様に湧き出てくる半グレ達は警察やヤクザが把握しきれない事を利用して、水面下で動き出す事が多い。
金でヤクザから安全を買うか、ハイエナの様にやっていくかの2択で、俺たちは無数のハイエナ達から1匹の尻尾を掴み始める。
「あ、来ました。サキからです」
携帯が振動すると、タカヤがすぐに携帯を手に取る。
「何だって? 」
「いつものロッカーに。売り上げ金と交換……だけっすね」
「それじゃ分かんねーだろ。捕まえたやつ何処いんの? ロッカーの場所聞いてこい」
「分かりました」
タカヤが頷くと仁がすぐ席を立って、リキヤたちのいる部屋に入っていく。
「時間指定して張り込んで、ロッカー開けにきたやつ捕まえるぞ」
「はい」
「あー面倒だな。どうせそいつも、ただの受け子で何も知らないんだろ」
先の長そうなハイエナの捕獲作戦に、グラスに残った酒を一気飲みしてタバコを灰皿に押し付けた。
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