望まない再会

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「あ……」 目を閉じるあかりの隣で、バッと口を押さえ声を押し殺した。目の奥が熱くなる。腹の中から痛みが込み上げてくる。 敵意を見せて、あかりが守ろうとしていた物の正体に、声を出せば涙がこぼれてしまいそうで、うまく息が吸い込めなくなっていた。 大きく息を吸い込んで、天を仰ぐ。海底から引き上げられて、ようやく息を吸えた様な感覚に必死で息を吸い込む。 「……ごめん。……ごめん。……すぐ助けてやるから」 体の下に腕を入れて抱き上げようとすると、あかりはバッと目を覚まし、再び逃げるように俺から体を離した。 「……大丈夫。取ったりしないよ。ほら、俺のネックレスとお揃いなんだよ。大丈夫」 自分のネックレスを首から外して、手に取ってあかりに見せた。 「ほら。同じだよ」 「……おなじ? 」 「そう。同じリングが付いてるだろ? だから、取ったりしない。そのネックレス首に着けてあげるから、俺のネックレス持ってて。ほら。おいで」 警戒した野良猫の様に、あかりは俺から避けた体を少しずつ緩ませる。あかりが手を伸ばすのをじっと待って、震えた指は戸惑いを見せる。 あかりは手を伸ばして、手のひらに乗ったネックレスに触れた。金属が触れ合う音がして、あかりはゆっくりとネックレスを持ち上げる。 あかりは眩しそうに何度も瞬きをして、ネックレスのトップに付いているリングをじっと見つめ、何度も自分のネックレスと見比べてから、ネックレスを愛おしそうに胸の辺りで握りしめた。 「貸してごらん。着けてやるから」 あかりは自分のネックレスを持った手をゆっくりと開く。開いた手のひらには爪が食い込んだ痕が赤く残っていて、ネックレスを手に取ってあかりの手のひらを撫でた。 「……泣いてるの……? 」   あかりが不意に俺の顔を覗き込む。 「……泣いてないよ」 あかりの頭をポンと撫でて、背中に回り込む。長い髪を前によけて、震える自分の手を何度も抑え付けた。目の前が霞む。胸が痛む。こんなものを守ろうとしていたあかりの姿に声が漏れそうになった。 「これでもう大丈夫だよ」 ネックレスを着けてあかりの髪を戻した。顔を見ずにベッドから下りて、落ちたコートを拾う。 「これ着て。行こうか」   「……どこに? 」 虚な瞳であかりが呟く。俺の姿は見えているはずなのに、あかりは俺を知らないものの様に見ている。 「大丈夫。もう怖い事も辛い事もないよ。俺を信じて」 ベッドに腰を下ろして、あかりの手を取る。酷い拒絶は無かったが意識が曖昧で、すぐにでも眠ってしまいそうだった。
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