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「……違います! 違います! そっ、そんなつもりじゃなかったんです。女の前だから、ちょっと、その少しだけ……かっ……格好つけようと……」
「いやぁ? あかりはお前の理想通りに、ちゃーんと薬漬けになっちゃってたよー? 」
川崎の汗ばんだ腕を取って袖をめくる。川崎の日に焼けた肌は質の悪いキャンパスに見立てて、皮膚にタバコの先端をとんとんと流れるように押し付けていく。
「あっ! い……いぃ……いぃ……。んぎぃ……」
川崎は歯をぎりぎりと食いしばり、仁に押さえ付けられた腕を獣の様な声をあげて覗き見る。あらゆる場所の血管が浮き出て、押し付けたタバコは熱を失う。
「これじゃー効率わりぃなぁ。鉄パイプ炙るかなぁー」
「ちっ! ちっ違うんです。あっあの、新種ドラッグ中毒性が高くて、ちょっと続けて飲ませたら異常に効いちゃって……」
「で? あかりに何て言って飲ませたの? あいつが、そんなもんに手出すとは思えないけど。あの女はサプリだとか言ってたけど? 」
押し付けたタバコの吸い殻を一本ずつ指先で川崎に投げ付けて、最後のタバコを口に咥える。
「いや。あの。その……千尋さんもいつも飲んでるやつで……ご褒美に……千尋さんから貰ったって言いました……」
「んー? あいつそんなこと何も言ってなかったけど? 」
「千尋さんの立場もあるから誰にも内緒だよ……って。ガハッ」
仁からナイフを奪い取って川崎の顔にナイフを刺し込んだ。グリグリと頬を削る様に抉ると、ねちゃねちゃと肉が千切れる音がして、面白いほど血が湧き出てくる。
川崎の絶叫した声が施設内に響き渡り、金切り声が耳に突き刺さる。口から溢れた血がむせ返す声と共に、タカヤたちにも噴水の様に飛び散った。
口から溢れ出る血が、じわじわと川崎の白いシャツを赤く染めていく。
「ぐぉぉぉ」と血と叫び声が周囲に散乱して、人らしさを失った川崎は、顔を真っ赤に染めて血の涙を流していた。
こいつに何の感情も生まれない。あるのはただ怒りだけ。泣き叫び、苦痛に歪んだ顔を見て、息絶えるまで痛ぶってやりたい。
ヤクザになると、こんな場面は幾度となく出くわす。下っ端のうちは自分の手を汚す事ばかりだった。
ナイフで刺し、目ん玉をくり抜いて、皮を剥ぎ取り、生きたまま内臓を抉り出して、爪の1枚1枚、指の1本1本。考えられる限りの全ての体の部位を削ぎ落としてやりたい。自分の手でこいつを地獄に葬る事以外で、俺は俺の慰め方を知らない。
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